校長室だより

卒業式

保護者の皆様にご臨席いただくことはできませんでしたが、本日卒業式を行いました。

以下校長式辞です。

 桜のつぼみもふくらみ、春の訪れを感じさせる今日の良き日、埼玉県立上尾高等学校第61回卒業証書授与式をみなさんとともに挙行できますことは、私たちにとりましても、この上ない喜びです。卒業おめでとうございます。

 今まで『当たり前』と思っていたことも、実は尊いものだと気づかされた一年でした。元気な声も楽器の音もボールを打つ音もしない、しんと静まり返った、主人公のいないこの場所は、学校ではありませんでした。奪われた日常にストレスを感じる日が続きましたが、よく頑張りました。再開しても元気なあいさつは聞こえず、暫くは、すれ違っても会釈をするだけでしたが、次第に元気になっていくみなさんの姿に勇気づけられました。わずか10秒のスピーチでも、書いた原稿を見ながら話をする皆さんは、次第に自分の言葉で説明できるようになりました。授業でも生徒総会でもインターハイのプレゼンでも見せてくれた堂々とした姿は他校の先生方もうらやむほどでした。成長していく皆さんは私たちに、多くの感動と、この学校で働く喜びを与えてくれました。心から感謝します。本当にありがとう。

 保護者の皆様、本日はご臨席いただけませんでしたが、3年間ありがとうございました。見守り、励まし、そして心のリフレッシュにたくさんの時間を使っていただきました。たくましく成長した生徒たちを見るたびに、感謝の気持ちでいっぱいになります。お子様たちは私たちの自慢の生徒です。ありがとうございました。

 刻々と変化する情報に翻弄される中、「AGE.FES」が生まれました。ゼロから何かを生み出すことの大変さと同時に新しいものを作り出す楽しさを感じたのではないでしょうか。アプリを自由に使いこなし楽しい映像を作り出す力には驚きました。いつもどおりというわけにはいきませんでしたが、それでもクラスTシャツを着て、熱い拍手で応援するみなさんに、負けた相手を拍手でたたえるみなさんに、上高が戻ってきたという嬉しさがこみあげてきました。

 今日はあいにくの天気です。高いタワーは「霧」に包まれているかもしれません。そこからは美しい景色を見ることもできません。しかしもっと上に登り「雲」を突き抜ければ、下には見事な「雲海」上には輝く太陽を見ることができます。君たちは、今どこにいるのでしょうか。下から雲を眺めているだけでしょうか。晴れるのを待つだけでなく、自分の力で太陽を感じて欲しい。大海原を吹く風にまかせて航海するのではなく、海図やコンパスで位置を確かめ、目標を定め、自分で帆を張り、力強く進んでください。無事を祈る大切な人に連絡を怠ることがあってはいけませんが、時には魚と戯れ、時にはきらめく夜空の星に心をときめかせ人生を楽しむことも忘れないでください。運命の風に翻弄されてはいけません。一人一人が自分の物語を生きてください。苦難こそ希望への道しるべです。

 心許し合える仲間に出会い、無我夢中で歩き続けた高校生活も卒業の時を迎えました。元気に駆け回った校庭、笑顔に光る汗、交わした約束、叱られたあの日も、泣いたあの日も、みんな忘れることのできない思い出です。君たちがくれた情熱は、いつまでもこの上尾高校に息づき、後輩へと受け継がれていくことでしょう。さあ新しい世界へ飛び立とう。必死になって、もがいて、生き抜いて、それでも辛い時には、帰ってきなさい、いつでも待っています。上高はいつまでも君たちの母校です。3年間ありがとう。

 卒業生の門出を祝い、前途に幸多かれと祈りつつ、式辞といたします。

                         令和3年3月13日 埼玉県立上尾高等学校長 林 昭雄