2019年4月の記事一覧
入学式式辞
満開の桜と木々の芽吹く若葉に春を感じるこの佳き日に、PTA会長 佐生厚夫(さそう あつお) 様、後援会会長 斎藤政利(さいとう まさとし)様、同窓会会長 野本一人(のもと かずんど)様をはじめ、PTA、後援会の皆様、そして多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、平成三十一年度第62回埼玉県立上尾高等学校入学式が、このように盛大に挙行できますことは、私たち教職員にとりましても、この上ない喜びであり、皆様に厚く御礼を申し上げます。
ただ今入学を許可いたしました369名の新入生の皆さん。入学おめでとうございます。皆さんの入学を、心から歓迎いたします。上尾高校は、昭和三十三年に開校して以来、今年で六十二年を迎えます。上尾市や周辺地域の方々から多大なご支援・ご協力をいただき、地元に信頼され、愛される伝統ある学校です。本校は、政治や経済、教育、そしてスポーツ界など、社会の様々な分野に多くの人材を輩出してまいりました。これは、本校の校訓である「文武不岐」「自主自律」の教育成果であります。「文武不岐」とは、「学習・勉強」と部活動や学校行事などの「体験」は切り離すことはできないということを意味しています。「文」と「武」の両方に取り組んでこそ価値があり、成長できるということです。「自主自律」とは、自分自身で考えて行動するとともに、自らをきちんと管理する姿勢を怠らないということです。高校は学習と集団活動を通して自己形成を行うところです。人は自らが決意したことに対しては、苦しくても気持ちをコントロールし、困難に打ち勝っていくことができます。生き方を学び、自分の将来を考え、夢や希望の実現に向けて大きく歩みだせる高校生活に、そして「自らの意思で困難にも立ち向かえる人」になってください。校訓とともにこのことを胸に刻んでほしいと思います。
さて、最近は「人生100年時代が到来する」とよく耳にします。寿命が延びると同時に社会の仕組みも変わり、賃金と会社への所属が生涯約束された日本型雇用から働く人そのものの価値が問われる時代へと変化していきます。一斤400円する食パンに長蛇の列ができ、通常の倍の値段がする甘くおいしい野菜がすぐ売りきれます。1kg100万円する塩にも買い手がついているそうです。人は「付加価値」のついたものを求めるようになり、それに応えられる人が貴重な存在としてクローズアップされる社会になりました。甘くおいしい野菜は、農業ではタブーとされた塩水を作物に与えることで生まれました。台風で海水が田畑に流れ込み、作物の壊滅的被害がたびたび報道されますので、塩水を作物に施すことが、斬新ではあるが非常に困難な挑戦であったということがわかります。この方は、甘くおいしい野菜をつくるためにどうすればよいかを徹底的に調べ、考え、塩水の効果にたどり着いたそうです。しかし、濃度の濃い塩水では作物は枯れ、濃度の低い塩水では期待した効果が全く得られないという日々が続きました。何度も何度も試行錯誤を重ね、ようやく適正な濃度にたどり着き、野菜作りに応用することができたそうです。このことは今進化著しいAIにはできない発想であり、このような「付加価値」を生み出せる人がこれからの社会では求められます。
私たちは、環境を整え、互いに信頼できる関係を築き、皆さんの成長を支援いたします。責任を持ってやり遂げたいと思います。皆さんは、挑戦し、あきらめることなく、努力をしてください。挑戦と努力の継続が、ここ上尾高校に入学した皆さんのやるべきことです。どんなに苦しくても、どんなに心細くても、友が、家族が、先生が、そして未来が君たちのそばにあります。挑戦するみなさんに追い風は必ず吹きます。ゴールを目指すランナーのように人生を力強く走っていきましょう。
そして、ご家族の皆様にお願いがございます。高校時代は伸び盛りの時期であるとともに、悩み、つまずくことも多い大変多感な時期です。ご家庭が、心を休め、エネルギーを蓄えられる場所になりますよう、ご協力をお願い申し上げます。保護者のみなさまとともに力を合わせ、「上高」の一員となった新入生一人一人の成長を支援し続けてまいりますので、本校の教育活動にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
新しい元号「令和」が発表されました。人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められています。様々なことが新しくなっていく世の中を互いに心通わせながら歩んでまいりたいと思います。
結びに、新入生の健やかな成長と、ご来賓ならびに保護者のみなさまのご多幸をお祈り申し上げ、式辞といたします。
平成31年4月8日
埼玉県立上尾高等学校長 林 昭 雄
1学期始業式講話
4月に着任した校長の林です。周囲の人からは「いい学校に行った。頑張って。幸せだね。」とたくさん言われた。3月28日初めて訪れ、4月1日から勤務した。大きな声であいさつされた。体育館カーテンをさっと外してくれて通路を確保してくれた生徒もいた。自分たちに活動を快く披露してくれた文化部の生徒もいた。実に気持ちのいい学校です。
今日は何を話そうかと考えてきた。多くの学校は「令和」という元号になり・・・日本の古典から初めて取り出されて、この意味は美しくみんなが力を合わせて・・・、と話すところだが、これは新聞記事、ニュースで十分見聞きしているから、いいですよね。言われているとおりの社会になることを願っている。今日は、最近考えさせることと私の皆さんへの願いを素直に話そうと思う。
最近考えさせられることは、人間関係の在り方です。
人にはいいところ、悪いところみんなある。考え方も多様化している。価値観も違う。これからの社会では様々な人と出会い、協力しながら仕事をし、共に人生を歩んでいくことになります。人と人が一つの社会で生きていくためには、何が必要か。それは互いに認め合い尊敬しあう関係になることなのではないか。
年齢や人生経験、社会的立場が違っていても、言葉遣い、お辞儀、話し方、気遣い、それを示すことが大切なのではないか。たとえば、「おはようございます」と頭を下げると同時に「よろしくお願いします」の言葉を添える、その気持ちであいさつする。そこから尊敬しあう関係が、始まるのではないかと考えている。多くの人とそんな関係を結びたい。
次に、私の願い。
今、皆さんは座ってじっとしている。顔をこちらに向け話を聞いている。空気の動きや風は感じない。歩くと「風」を少し感じる。走るともっと「風を感じる」、早く走ると「もっと強く風を感じる」これは当たり前のこと。君たちの学校生活、何もしないでじっとしていると「何も感じない」、何か手に入れたいもの、何かをなし遂げたいものがあると人は行動する。必ず壁にぶち当たる。これも当たり前。目標が大きければ大きいほど大きな壁に突き当たる。やはり当たり前。それは自分が挑戦している証。失敗もあるが、失敗してもエネルギーゼロになることはない。またやり直すと、学習していることだから、今度は成功の確率はぐんと高くなる。「辛い」、そのつらさは「挑戦していることの証」、自分をほめていい。頑張っている自分を誇りに思っていい。助けてくれる人はたくさんいる。挑戦しないこと、つらさを感じないことのほうが問題だ。
自分にはできないかも知れないということに挑戦してほしい。元気に、挑戦していることを楽しめる生徒になってほしい。
この2つを皆さんへの最初のメッセージとして届けます。1年間どうぞよろしく。