2023年4月の記事一覧
令和5年度第66回入学式校長式辞
式辞
春一番はいつ頃吹いたのであろうか。外套やマフラーが不要になったのはいつであったのか。国際的社会情勢の変化とともに、あまりにも世の中の流れが早く、その波にのまれそうになっている今日この頃です。
入学式前後はとかく気候の変動が激しく、厳しさを教えてくれる様相を呈しています。しかしそれが過ぎ去ると穏やかな季節となります。春本番、桜の開花がとても早かった学年末、春季休業でしたが、晴れの舞台をいち早く準備してくれた季節の風物詩に感謝せずにはいられません。自然の摂理には従いながらも、共存しながら学校生活をスタートさせていきたいものです。
ただいま入学を許可されました三六九名の新入生の皆さん、上尾高校への入学誠におめでとうございます。また、ご列席いただいた保護者の皆様におかれましても、長い受検生活を終え、ほっと一安心。感慨深くこの日を迎えられたと思います。重ねましてご子息、ご子女のご入学に対して、お祝いの言葉を述べさせていただきたいと思います。
本日は、来賓としてPTA会長様、PTA副会長様をお迎えいたしました。新入生の皆さんに対して後ほどご祝辞を賜りたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。教職員共々晴れの舞台に対し、前途を祝していければと願っております。
上尾高校は伝統校です。地域の方々の熱い思いに応えるべく、校訓「文武不岐・自主自律」を真正面から受け止め体現できる。伝統の重みを感じながら、この学び舎の中で、夢を描き、夢を語り、自己実現を目指してください。
本日の始業式で、論語の一説からこのような言葉を在校生諸君に送りました。
知者は惑(まど)わず
仁者は憂(うれ)えず
勇者は懼(おそ)れず
知者とはいろいろなことを知っている人です。ただそれは単なる知識を兼ね備えているだけではありません。今まさにある国会議員が自己の知識をひけらかし、暴言をはいたりして、国政の場を荒らしています。人としてどうあるべきかということも理解しているのが知者です。利己的すぎる知識で論破しているだけでは、組織全体に迷惑をかけるものです。知者とは自信を持って行動できる人でぶれない、迷いのない人なのです。
仁者は思いやりの気持ちや誠実さを兼ね備えている人です。自分が壁にぶつかったり、困難な状況にある時などは、人にやさしく接することはとても難しいものです。しかしそれができるのが仁者です。自己犠牲のもと、他社との共生を心がけて、寄り添う気持ちを持っている人です。まさに懐が深くおおらかな心の持ち主なのでしょう。人々に安心感を与えられる人です。
勇者はどんな時でも決断力と実行力を発揮できる人です。正しいことはわかっているが、決断することに対して臆病になることは多いものです。しかし迷わずに実行できる力を持っているのが勇者です。実効性に裏付けられた、勇敢な姿勢です。本来的に組織をまとめ上げる人物に求められているのは、この勇者の姿勢です。重大事項への対応と、判断、曲げない意思など。リーダーとして持ち合わせるべき姿なのでしょう。是非皆さんもこのような資質を持ち合わせ、将来的なグローバル社会を牽引する指導者になってください。基盤、基礎を造るのが上尾高校です。
日々の授業の中で、基礎知識の充実、興味関心のあることへのあくなき探求心をもって、知者に近づいていくことの努力を重ねてください。また、学級活動や特別活動、総合的な探究の時間、多くのコミュニケーション活動を通じて仁者である公共的資質を養っていただきたい。また、部活動など、自己の鍛錬の場で自己の意思を強固なものとして、校訓を体現できる強い、屈強な自分の立ち位置を築きあげてください。
上尾高校は、そのような皆さんの純粋かつ前向きな姿勢、一歩踏み出す勇気を後押ししてくれます。皆さんも、先輩たちが築いてくれた歴史と伝統、実績を継承しながら、明るい未来に向け充実した高校生活をスタートさせてください。
まずはしっかり地に足をつけ、方向性を定めたならば自己の進む道を全力で歩んでほしいと思います。
令和五年四月十日
埼玉県立上尾高等学校 校長 嶋村 秀樹