校長室だより

2023年7月の記事一覧

校長より【第1学期終業式】

 

子を持つ親の思いとは 

 7月15日(土)、16日(日)と、さいたまスーパーアリーナにて4年ぶりに進学フェアが開催され、大盛況のもと幕を閉じました。3部構成で入場制限を設けながらも、多くの来場者があり、活気のあるイベントであったと感じました。上尾高校のブースも切れ間なく受検生とその親の姿が見受けられました。かかわっていただいた方々には厚くお礼申しあげます。

 もし自分が入試を経験する時期にこのようなイベントがあったら、親と一緒に会場に行ったであろうかと考えたら、自分の時代ではありえなかっただろうなと思いました。別に煙たがることでもなく、行動をともにしたくないと思うことでもなく。あのころ、自分のことは自分でやるということが当たり前であったように思えます。親の考えも一緒でした。保護者とブースを訪れる風景や、行動を共にする姿を見ると、真剣にお子さんの進む道を考え、後押しする気持ちが十分に伝わってきました。子を持つ親の気持ちとはまさにこのようなことなのではないのかもしれません。親の気持ちをしっかり受け止めながら成長する。過保護という概念は捨てて、成長期に甘えることも必要なのかなと強く感じました。 

 こんな私も一度だけ大きくありがたかった、親からの愛情を感じたことがありました。高校入試の発表の日、合格番号のボードを確認する道すがら、前方から歩いてくるスーツ姿の男性を見て、父親であることを確信しました。なんと父親は満面の笑みを浮かべ、ピースサインを出していました。「合格?」とすれ違いざまに聞きましたが、頷いたまま仕事に向かいました。普段ちっとも自分に向き合うこともなく、勉強しないことに腹を立て、怒鳴られてばかりいた父親が心配し、朝早くに受検校に来ていたとは、一緒にいた友人は笑っていましたが、妙にその時は恥ずかしい気持ちはなく、ありがたい気持ちでいっぱいでした。晩に家に帰り、感謝の気持ちと今後の決意を述べた事を覚えています。そんな父親も、四年前に他界しました。毎日仏壇にお茶を供えるのが日課です。なんでもう少し話し合えたり、怒られたりしてもらえなかったのか、今思えば、後悔ばかりです。 

 さて、「親からの厳しい愛」といえば真っ先に思い浮かぶのが、「獅子はわが子を千尋の谷に落とす」ということわざが思い浮かびます。子供が自立すべき時期がくると、母親が子に餌を与えず、または運ばないで自立を促す厳しい愛情行動に出るのは、ライオンから小鳥まで、例外がないようです。 

 これまで子ライオンに愛情をたっぷり注いで育てていた母ライオンが、子離れの時期になると、手の平を返した態度で子ライオンを追い払うシーンを撮った番組を見たことがあります。映画「キタキツネ物語」にも同様のシーンがあります。優しかった母ギツネが子ギツネを自立させる時期と判断すると、態度を急変させて子ギツネを追い払います。 

 母親の急変した態度の理由がわからない子供は激しく追いすがり、厳しい自然環境の中で子供の生きる唯一の道は突き放すことだと知る母親の子への牙は、時には死闘です。いつ親が食われるかわからない弱肉強食の世界で、子供が自分で狩りができなければ生きていけないと知っているのは親側だけなのです。このように厳しくしつけながらも、子の自主性を尊重し、生徒個で生活していく、自活する術を磨くという経験も成人前に持ち得ていく必要な力であると考えます。 

 人間社会ではここまで露骨なことはないと思いますが、いつの日か一度このように親離れする時が来ると思います。しかし自活することは全て親離れする事ではありません。生活の援助やアドバイスを聴きながら、将来的には親の面倒をしっかり見てあげることも必要です。

 いつまでたっても親は親、子は子であり、老いてきた自分と親を重ね合わせ、自分の人生を顧みる日がやってきます。私自身がまさにその時期に差し掛かっています。 

 進路を決める時期、向学心に燃え塾に通う時期、気候に合わせ、羽根を伸ばす時期、趣味に没頭する時期、恋愛の時期、まさにこの夏が自分を変える、変えてくれる、チャレンジする時期です。是非親に甘えられる部分は甘えながらも、将来的に恩返しができるよう、精一杯努力し、自活する力をつけながら、学校生活を悔いなき者とするよう、努力してみてはいかがでしょうか?

 「孝行する時に親はなし」、後悔する前にきちんと自分に向き合い、自己の成長を親御さんと共に喜べる、そんな学校生活を送っていただければと思います。

彩の国進学フェア終了

多くの受検生、保護者の皆様方におかれましては、上尾高校のブースにお越しいただき本当にありがとうございました。この後は、学校独自の説明会やオープンスクール、文化祭などの行事も実施することになります。是非上尾高校に足を運んでいただき、生徒の生き生きとした態様を確認していただければ幸いに存じます。

  

暑さ厳しくますます夏本番になりますが、お体に御留意され、学習に集中していただければと思います。上尾高校で皆さんの元気な姿を拝見したく、御来校を心待ちにしています。

校長