校長室だより

2015年8月の記事一覧

第65回PTA全国大会 in 岩手

第65回PTA全国大会 in 岩手
未来圏からの風をつかめ!
~新時代を担う君たちと共に~

*大会テーマ「未来圏からの風をつかめ!」は岩手県花巻市生まれの宮沢賢治の詩「生徒諸君に寄せる」の一節

 8月20日、21日に全国高等学校PTA連合会大会 岩手大会が盛岡市などの7会場で開催された。全国各地から総勢およそ9500名が参加し、保護者、教員が高校生のためにできることについて語り合い学び合った。埼玉県団は377名、上尾高校からはPTA会長はじめ4名の保護者(PTA役員)と校長の曽根が参加した。
開会式の前には地元高校生による数々のアトラクションが披露された。
写真は岩手県立北上翔南高校の鬼剣舞。

 20日午前の全体会は開会式と基調講演。全国高P連会長のあいさつに続いて下村博文文科大臣の祝辞、そして芝浦工大学長、村上雅人氏による基調講演が行われた。
 午後は、テーマごとに7つの分科会で実践報告やシンポジウムが行われた。本校参加者は4つの分科会に出席、私は第2分科会「進路指導とPTA」に出席した。
 21日は再度全体で映画監督の大友啓史氏による記念講演と閉会行事を行った。

精力的に動いた下村大臣 
 下村大臣は本大会3年連続の出席。一昨年の山口大会では1時間半ほどの講演を行い、文科行政全般について熱く語った。今回は2020東京オリパラ絡みの騒動などで、それどころではないだろう、祝辞は代理出席者の代読だろうと私は予想していた。予想ははずれ、大臣自ら盛岡を訪れ、20分以上にわたり祝辞のレベルを超えて諸施策の説明を行った。最も時間を割いたのは高校教育の質の保証、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」であった。
 その夜、ホテルに帰ってテレビを見ていると、下村大臣と松井大阪府知事の会談のニュースが報じられていた。大阪府が公表した全国学力テストの結果を高校入試の内申点に利用する施策を、文科省が来春に限って容認するという。目的外使用だが、有効活用ともいえる。大臣はこの日、盛岡のあとで大阪でも仕事したのですね。

科学者と映画監督の講演 言葉の力
「夢高くして足地にあり」
「夢なんか持たなくても楽しいことあるよ」

 基調講演の芝浦工大学長、村上氏は1955年、盛岡市の出身。盛岡一高、東大工学部卒の超電導の専門家だ。自分の半生を振り返って教育の重要性を語った。高校3年生のとき大学受験に不利と言われてもアメリカに1年間留学したことが大きかったと。
 講演タイトルは「夢高くして足地にあり」。旺文社の社長の言葉として知ったと紹介された。
 私にとってはたいへん懐かしい言葉であった。私は1982年に大学を卒業して旺文社に入社した。以下は旺文社の創業者、赤尾好夫氏が定めた社是だ。
 夢高くして足地にあり
 良書を供して英才を育て
 文化を興して以って栄える

 赤尾好夫氏は日本教育テレビ(現在のテレビ朝日)、ラジオの文化放送、また日本英語検定協会などの設立に関わった。
 出版物や教育・文化事業を通じて村上氏のような英才を育てることに貢献したのだと改めて実感した。

 2日目の記念講演は慶應義塾大学法学部卒業後NHKを経て映画監督として活躍している大友啓史氏。1966年盛岡市出身。連続テレビ小説「ちゅらさん」や大河ドラマ「龍馬伝」、また映画「るろうに剣心」などで知られている。
 講演のタイトルは「アドリブを生きる力」。
 作品づくりも人生もすべてを計画どおりにコントロールすることはできない。ハプニングやトラブルがあったときにどんな対応ができるか、アドリブ力の大切さを撮影現場の数々のエピソードを交えて語った。

 私の印象に残ったのは、70分の講演が終わりに近づいたときの「夢なんか持たなくても楽しいことあるよ」という言葉だ。話をまとめようとしたときに初めて(?)PTAの集まりであることを意識したかのように、高校生に伝えたいこととして発せられた言葉であった。

 教育の場ではしばしば「夢や目標を持て」というようなことが語られる。もちろん、あればそれに越したことはない。しかし、夢や目標などというものは、無理して決めるものではないし、まして他人から押し付けることなどできない。
 大友氏は映画監督になりたいと思ったわけではない、どちらかと言えば、消去法であれも無理、これも無理……と考えた結果だったという。
 作品ごとに数百人から千人以上の様々な専門性を持ったスタッフを束ね、視聴率や興行収入で評価される実力の世界で勝ち残ってきた人の言葉である。
 夢などなくてもいいということは、もちろん努力したり模索したりすることを軽んじることではない。
 奇しくも「夢」について全く違うことを語った2人の講演から改めて言葉の力を感じた。

芭蕉の名句を英語で
 往路に立ち寄った平泉の中尊寺金色堂近くで、英語の俳句の句碑を見つけた。
 The summer grass
 'Tis all that's left
 Of ancient warriors' dreams
 夏草や 兵どもが 夢の跡
右:松尾芭蕉の「奥の細道」の名句を新渡戸稲造が英訳した句碑。

 五千円札の新渡戸稲造も岩手県の出身だ。俳句の英語訳などもする人だったとは。上手いなぁ。日本語では1行の俳句が英語では3行に。日本語の表現密度は高いのですね。